ESSAY

2024-12-29 23:59:00

母と生きた最後の年がおわる

母が生きた最後の年が終わろうとしている。

 

私事ながら、先々月、母が死んだ。

 

美術、民芸雑貨、植物、食器、

文芸、手芸、料理、庭や畑…

物を作ること、暮らしの手仕事を慈しむ

日々の生活を大事にして生きている

そんな母だった。

画家も焼き物も花も作家も、

どこで知ったのだろう?と思うような、マニアックなものまで

母はよく知っていた。

 

子供の頃、

私たち姉妹にシルバニアファミリーを母が買ってくれた。

フェルトで人形の家具や小物を作ってくれた。

ドールハウスを知るきっかけは母が持っていた本だった。

今、こうして私がドールハウス作家として活動しているのは

母の影響が大きい。

 

少しでも、何か形を残したい…

少しでも、先につながる何かを形にして母に見せたい…

我儘な願いだけど、少しでも長く生きていてほしい。

間に合わせたい。

なんとか今年の冬は越せるかな、越せるといいなぁ…

最期がいつになるのかは誰にも判らない。それを決めていいのは母自身のみ。

だから、出来る限り、少しでも長く、普通に暮らして、最期まで一緒に生きよう。

そう思い考えていた。

 

突然だった。

間に合わなかった。

 

なんでいっつも私は間に合わないのかなぁ…なんで自分は… 

 

間に合わない自分が恨めしかった。

 

作りたいものはたくさんある。

私が物を作ることを

昔から誰よりも、望み、応援してくれていたのは母だった。

しかし、母はもういない。

 

母が生きた最後の年、

ハンドメイド・クラフト作品・手仕事品の通販サイト「iichi」さんの『iichi通信』で

ミニチュア・ソファを紹介していただけた。

北欧雑貨・インテリアの店「ILLUMS」さんのノルディカニッセのジオラマで

ミニチュア・ベッドを使っていただけた。 

幸い、ジオラマの方はWEB写真を母に見せることができた。喜んでくれた。

 

母と一緒に生きた最後の年が終わろうとしている。

 

母はもういないけれど

どこかに私の作品を喜んでくれる、心待ちにしている人がいると信じて

来年もコツコツ作り続けてお届けしたい。

母が生きてきた時間を、大事にしてきたものを

次の年へ、誰かのもとへつなげていきたい。

 

母と生きた最後の年が終わる。

明日も日々の暮らしの中のものづくりが続く。